偉大なる男の影に偉大な女あり~映画『ヒッチコック』~

サスペンスの神とあがめられたヒッチコック。
無冠の帝王の影に実は妻の支えがあった事は
近年まで知られていなかった事実だった。
すぐれた脚本家であり編集者であり、ひらめきに満ち、
夫を支え続けた妻・アルマの視点からみたヒッチコックと
代表作『サイコ』とは?
サスペンスの帝王と呼ばれつつ、『北北西に進路を取れ』の
プレミアの後、ヒッチコック(A・ホプキンス)はメディアから
引退はいつかと聞かれ、腹をたて、次の企画で
世間を見返してやろうとする。
しかし秘書のペギー(T・コレット)が持ち込んでくるのは
パっとしない企画ばかり。
企画書の山の中からヒッチコックは連続殺人鬼
ノーマン・ベイツについてかかれた『サイコ』を取り出し、
惹かれるものを感じ、妻アルマ(H・ミレン)にみせる。
エージェントも映画会社も、当たらないとそっぽ向く
状況の中、ヒッチコックは『サイコ』を完成させることは
できるのだろうか・・・
あの名作『サイコ』が世に出るまで、いかにヒッチコックが
迷走したかが描かれている作品でもある。
ネタバレを防ぐために、原作本を買占め、製作関係者と
俳優女優に口止めをし、映倫に引っかからないように、
殺人シーンをぼやかし・・・これだけでも
『ほんの一部の苦労』に過ぎなかったことが
映画の中で描かれている。
一見堂々としているヒッチコックだが、実は
臆病で、常に世間からの批評の目にさらされ
情緒不安定になっているのを妻アルマが何があっても
ささえ、時には仕事を持ってくるシーンは、
現代の男性へのエールともとれるだろう。
偉大なる男性の影に、偉大なる女あり。
ヒッチコックの正しい選択が伴侶選びだったことも
うかがわせる映画でもある。
映画の企画中から『引退しろ』と囁かれていた事に、ムカッ腹をたてている
秘書のペギー(トニ・コレット)は『007カジノロワイヤル(元祖・コネリーの方)』の
企画をもってくるのだが、ヒッチコックは乗り気ではない
うんざりするような企画書の中から、ペギーに探させると、ロバート・ブロック作の『サイコ』が
あった
連続殺人鬼エド・ゲインの犯罪に基づいた『サイコ』にピンときたヒッチコックは、
妻アルマ(ヘレン・ミレン)に早速相談するのだが・・・
ヒッチコック不朽の名作サスペンス『サイコ』はどのようにして出来たか
・・・アレがトラウマになってサスペンスを観れなくなった人もいるだろうけれど(涙)
そういうアタシもわざわざ金を払ってまでヒッチコックのサスペンスは観ようとは思わないし、
『サイコ』も最初の一撃が『セブン』でゾンビが悲鳴あげて起き上がってくるシーンや、
『エイリアン』よりもグロくて『フルメタル・ジャケット』の前半でヴィンセント・ドノフリオ演じるパイルが狂って上官ブっ殺して
自殺するシーンなんかブっとんでしまう程コワく、観る気ゼロなので、オススメしない映画五本の指に入る・・・のだけど
確かに、奥さん+ダンナ(ヒッチコック)の『作り手』の手腕としては、辣腕だったと思います
ただ、あの映画で、連続殺人鬼ノーマン・ベイツを演じたトニパキこと、アンソニー・パーキンスは、あの映画の主演で
以後のキャリアが全て台無しになり、挽回の機会も与えられず、エイズで死んでしまう非業の最期だった
わけですが
・・・しっかし、当時のヒッチコックのこの作品への入れ込みようの激しさが、映画から伺えます
『サイコ』を観て、ただコワい(号泣)ってイメージしかなく、ここまでネタバレを封じる作戦にでてたとは、
オドロキでした
ヒッチコックは『サイコ』のネタバレ封じの為に、国内に出回る原作本を買い占めてしまいます。
映画の中盤でヒロインを殺すだったヒッチコックに,はじまってから30分であのショックな場面を
もってこいといったのは、奥さんだったというのは
それどころか、この映画、最初から難航通り越してトラブル続きだった映画というのがわかる
も〜こんなんで映画作ろうと思ったな・・・一触即発状態
エージェントのワッサーマン(マイケル・スタールバーグ)には『ニッチ向けでんな』と
呆れられ、パラマウントの社長バーニー(リチャード・ポートナウ)には
『出費できん』と怒られる
『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』のマイケル・チミノといい、パラマウントは10年単位で、こういう
『地雷』のような映画会社の屋台骨を揺るがしそうなトンデモ監督を抱えてるような気がする
まぁ
安心して観られる映画ばかりだと、おもしろくともなんともないし、人の価値概念というものは、
変わるものもあれば変わらないものもあるので、時代を経て評価されるものもあるだろうし

秘書ペギーは脚本をかくジョセフ(ラルフ・マッチオ)を雇うのだけど、彼がエロ+マザコンなど、そっち方面で
問題を抱えて精神科に通ってるというトンデモ脚本家だったりしたのだ
『ベスト・キッド』の彼がこんな役になっちまったなんて(涙)とないてはいけないが、ないてしまう

いよいよ問題の配役シーン
連続殺人犯で二重人格者のモーテルの主ノーマン・ベイツをアンソニー・パーキンス(ジェームス・ダーシー)に配役する。
人を魅了せずに居られない男性だというコトが第一条件だったらしい
ヒロインは、最初グレース・ケリーやデボラ・カーがよかったヒッチコック(金髪碧眼の美女が好き)、
マリオン・クレイ役にジャネット・リー(スカーレット・ヨハンソン)で妥協する。妥協・・・つーても
演じるヨハンソンは、『タロットカード殺人事件』でウディ・アレンにも気に入られたのだし、ピッタリだと思うんだけど
サイコの例のシーン、どうしてシャワー室の『外』から殺すというアングルにしたのかというと

当時の映倫通らなかったからだそうな(残酷すぎるから)

が、とある方法で、さらに残酷になってしまったこの映画
・・・それはググる+『サイコ』を観れば判るので(おい)
ヒッチコックはネタバレを恐れて俳優女優製作関係者にネタバレの口止めまでした
ここまでなんとか低予算でも上手くいっていた『サイコ』の撮影だったのだけど、次回作として
用意していた『めまい』の主演女優の突然の降板や、カミサンが
脚本家のウィットフィールド(ダニー・ヒューストン)と共同で次回作の脚本執筆をしているのを
目撃してヒッチコックは
『カミサンは浮気するし、オレの周りからはどんどん人は逃げていくし、このままじゃぁ映画作りも
おしまいだ』と悲観にくれるようになる(涙)
そんなワケじゃぁないのにとんでもない誤解
編集に、編集を重ねて、ようやく『サイコ』は日の目をみることになったのだけど

全米で2館しか上映されなかった

それが世界中に知らぬ人は居ないといわれるほどのスリラーになったワケで
映画の最後は、ヒッチコックの肩に一羽のカラスがとまり、あの『鳥』になるわけです
アレもコワかった・・・ヒッチコックのヒット作は人間が深層心理で怖いと思うものの
ズバっとついているからコワいんだと思います
それを世に送り出すには、彼一人ではなしえなかったことだったのでしょうね